●建築という料理
何を食べるか迷うほど、世の中には、いろいろな料理が氾濫していています。
食の三要素は、栄養、安全、美味しさといわれていますが、
果たしてあなたはそれを毎日気にしていますか。
むしろ、価格、時間、手軽さの三要素の方を気にしていませんか。
それでも食事は、1日3回食べれば、一週間で、21回も選ぶチャンスがありますから、
朝はマックで、昼は吉牛、夜は残業でコンビニ弁当を食べた日があっても、
翌朝はちゃんとしたご飯と味噌汁で、昼はイタ飯のランチにして、
夜は気の利いた小料理屋で、お酒も交えてたらふく食べるなんてことができます。
衣食住で言えば、「衣」も同じようなもので、選択のチャンスは日々巡ってくる。
では、「住」はどうでしょうか。
住宅は、普通は一生に1回、どんなに多くても選べるのは数回が関の山。
料理を選ぶときの栄養、安全、美味しさにあたるのが、
建築では機能、安全、快適さ、です。
さきほど、食事については価格、時間、手軽さを人々が求めるようになったと書きましたが、
住宅についても同じようなことが言えるように思います。
ファストフードやコンビニ弁当のような住宅…とまではいいませんが、
ファミリーレストラン程度の住宅で満足してしまっていませんか。
なにも割烹や料亭、高級フランス料理や満漢全席がいいというのではなくて、
世の中には、小さくても、栄養、安全、美味しさはもちろんのこと、
それでいて価格、時間、手軽さも満たしてくれる、路地裏にある、
誰にも教えたくない隠れ家的小料理屋のような、そんな建築もあるのです。
もう一度、今住んでいる家、これから住もうとしている家について考えてみませんか。
「建築のことは、よくわからないので」とよく言われますが、
建築と料理は、実は非常によく似ているのです。
建築家の仕事も、料理人の仕事と似ています。
料理人がメニュー、材料、料理法、器、テーブルセッティング、
相手の予算と店の予算を考えて料理を作るのと同じように、
建築家もデザイン、機能、材料、工法、環境、予算等々を考えて家をつくるのです。
両者の究極の目的は食べる人、住む人に喜んでもらうことなのです。
一生の内に一種類だけしか料理が食べられないとしたら、
「何を食べますか?」
そう考えてみてください。その料理こそあなたが住むべき家なのです。
住む人にとって、住宅とは、どんな料理を作ってくれるかを任せる事と同じです。
使う材料、料理法、盛付、順番、シチュエーションのすべてを1つの料理として味わい、
満足してもらう。それと同じようにその人の生活や要望を納得がいくまで、話し合い、
それに対する応答として、1つの料理と同じように、建築を提案していくものだと考えます。 |